【ゴールドマン・サックス】人を信じて任せ切る。GSでの経験は、事業で社会に還元する

特定の企業から輩出された優秀な人材とそのネットワークを「◯◯マフィア」と呼ぶ。マフィアたちはどのような経験を積んで、キャリアを構築しているのか。今回は、グローバルであらゆる金融ニーズに応えるゴールドマン・サックス マフィアが集結。BtoBの営業支援サービスを提供する株式会社TSUIDEの松田輝正氏と、外国籍人材と日本企業をつなぐLaboro株式会社の野口祐介氏、海外旅行のオリジナルツアー企画や英語事業を展開する株式会社Wanderismの庄司圭織氏に、ゴールドマン・サックスで学んだこと、今に生きていることを語っていただいた。

入社の決め手は、人の魅力

──松田さんと野口さんは2016年入社の同期、庄司さんは2014年入社と伺いました。ゴールドマン・サックス(以下、GS)を選んだ理由を教えてください。

松田 僕は慶應義塾大学でラグビー部に所属していたのですが、大学2、3年のときの監督が、GSから出向してきた人だったんです。

監督はとにかく決断が早かったし、効率的にチームを勝たせる方法や、ラグビー以外のスポーツを研究してラグビーに生かす方法など、いろんなことを勉強させてもらいました。

だから、僕も監督のような社会人になりたい、監督が育った環境に身を置きたいと思って、GSに興味を持ちました。

株式会社TSUIDE CEO松田輝正
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、Goldman Sachs Asset Management株式会社に入社。ファンドの資金調達営業に従事し、4,000億円規模のファンドを組成。その後、Fidelity投信株式会社を経て、株式会社TSUIDEを設立。

野口 僕は、学生時代に東南アジアの起業家をコンサルティングする活動を3年間続けていたこともあり、就職先はコンサルティングファームか投資銀行の2択で考えていました。

そのなかでGSを選んだのは、GSの証券アナリストになれば自分の成果が明確にわかるので、実力試しに良さそうだと思ったから。加えて、面接で会う人がみんな自信に満ち溢れていて、純粋に「この人たちと一緒に働きたい」と思いました。

Laboro株式会社 CEO野口祐介
学生時代、アジアの企業に対する経営コンサルティングを行う組織(NPO法人very50)にて勤務。ラオスのヨーグルト企業、インドネシアの農産物市場、ハワイの飲食企業などを担当。卒業後はゴールドマン・サックス証券でZOZO、リクルート、ソニーなどインターネット・人材業界の証券アナリストとして勤務。 2019年Laboro創業。

庄司 私は就職活動では業界に関係なく、かなりたくさんの企業を受けていました。そのなかでGSに惹かれたのは、みなさん人が良かったから。

面接で遅刻した私を許してくれる寛大さもあったし(笑)、まだ社員になるかもわからない私たちに疑似面接をしてくれるなど、対応がかなり手厚かったんですね。

それに、みなさん仕事が好きでプライドを持って働いているのを感じて、私も一緒に働きたいと思いました。

 株式会社Wanderism CEO庄司圭織
早稲田大学政治経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントにて投資信託のセールス・マーケティングに従事。バンガードでは最年少マネージャーとして海外籍ETFのセールス・マーケティングに従事し、英語教育ならびに海外ツアーの企画を行う株式会社Wanderismを創業。

新人でも関係なく与えられる、大きな裁量

──GSではどんな仕事をしていたのでしょうか?

松田 僕はアセットマネジメント部門で、ファンドセールスをしていました。個人投資家からお金を集めるのがミッションで、難しいことをいかにわかりやすく伝えるかに重きを置く、GSっぽくないチームだったと思います。

野口 僕は証券アナリストとして、インターネット業界と人材業界を担当していました。しかもこの2つの業界担当は僕と上司の2人だったので、世の中を大きく動かしている実感がありましたね。

──2人ですか。

野口 そうです。日本の証券会社なら6、7人で担当するビジネスサイズだと思います。

たとえば、僕の最初の仕事はLINEの上場案件でした。これも2人で対応したのですが、LINEの株はかなり人気で、しかも日米同時上場だったため、上司はアメリカに渡ってアメリカやヨーロッパの投資家に説明をしながら分単位のスケジュールをこなしていました。

そうなると、日本や香港、シンガポールの投資家からのアジア時間の問い合わせは、僕が担当せざるを得ないですよね。常に10人、20人の電話待ちが発生するくらい投資家からの電話がひっきりなしにかかり、すごい会社に来たなと思いました(笑)。

松田 研修が終わった直後だったよね?

野口 そう。ほぼ何もわかっていない入社1ヶ月目でした。いきなり大役を任されて、すごい責任感と緊張感と高揚感があったのを覚えています。

庄司 私が入社した頃、新入社員は6ヶ月ごとに3部門をローテーションしていたので、最初の1年半はひたすらインプットの日々でした。

ただ、この期間中も会社のWebサイトにも載るレポートをたくさん作らせてもらえたので、1年目からの裁量の大きさに驚きましたね。

もちろん、そのために毎日若手中心の朝会をして市場情報のアップデートを発表したり、英語と日本語のレポートを何本も要約して上司に報告したり。かなりスパルタなインプットをしていたから、アウトプットも任せてもらえていたのかなと思います。

本配属は松田と同じアセットマネジメント部門で、債券系ファンドのマーケティングや、リテールセールスを担当。リテールセールスでは前線で何年も走ってきた先輩とペアで一緒に走らせてもらったので、学びがたくさんありました。

「とりあえず一回やらせてみる」カルチャー

──GSの印象的だったカルチャーを教えてください。

野口 とにかく信頼して任せてくれるカルチャーがありました。しかも任せて放置するのではなく、失敗したときは上司が責任を取る覚悟で任せてくれるんです。

たとえば、僕はほとんど英語ができなかったのですが、上司からすればどれくらい英語ができないのかわからないですよね。だから、入社直後に上司から海外投資家との電話会議を「一回やってみて」と任されたんです。

案の定、一言もわからなくてあたふたしていると、上司がそっと電話回線に入ってきて投資家の質問を聞き、回答をチャットで送ってくれました。僕はその英文を読むことで会議は乗り切りましたが、上司のリカバリーがなければ話にならなかったことが、とにかく情けなかった。

そこから必死に英語を勉強して海外投資家と会話ができるようになりましたが、もし上司が任せるだけでリカバリーせず、後から叱るだけだったら、ここまで必死に頑張れなかったと思います。信じて任せてくれる上司の期待に応えたい一心でした。

庄司 「とりあえず一回やらせてみる」カルチャーはあったよね。私も新人のとき、電話でお客様から質問を受けてどうしても答えに迷っていると、すかさず先輩がチャットで教えてくれていました。

入社したての新卒に金融知識はほぼゼロだけど、とりあえずやらせてみる。先輩が自分で手を動かした方が早いことも、戦力になると信じて任せてくれ、小さな怪我は経験させつつ大失敗になる前には必ずサポートをしてくださるんですよね。

怪我の対処は自分でやるから成長につながるし、自分以上に頑張っている先輩が全力でサポートしてくれるから、素直に頑張ろうと思える環境でした。

松田 上司のサポートはかなり手厚かったですね。僕も、チームで大規模ファンドを作ることになったとき、急遽、翌日が期日の役員プレゼン資料が必要になり、僕がそれを任されました。

結果、僕が作った資料の8割は上司が短時間で修正することになりましたが(笑)、プロとして任せてくれたのが嬉しかった。

任せてやらせてみて、最後はちゃんとリカバリーする文化があったから、どんなことにも挑戦できたし、成長できたのだと思っています。

人を信じて任せ、チームを作る

──GSで学んだこと、今に生きていることを教えてください。

松田 僕は3つあって、1つは数字にコミットするカルチャー。2020年に起業以来、無借金・無調達で売上と営業利益を上げ続けているのですが、それは数字にコミットするカルチャーが僕に染み付いたからだと思っています。

2つ目は、人を信じて任せ、チームをつくること。起業したての頃は何でも自分でやっていましたが、成長するならチームづくりは必須です。GSでその大切さを学べていたのは良かったと思っています。

3つ目は、お客様の声を大事にすること。GSはお客様の声に敏感で、お客様が困っていることや求めているものを形にするカルチャーがありました。だから今も、お客様との商談から新しいサービスや商材が次々と生まれています。このスピード感と実行力もGS仕込みですね。

野口 僕も信じて任せるカルチャーはそのまま生かしています。僕は2019年に起業して、現在は約100人の従業員を抱えていますが、その中で日本人は僕だけなんですね。

平均年齢が22歳と若く、日本語もあまり話せないメンバーが多いけれど、信じて任せると本気で頑張ってくれる人ばかり。

だから、失敗したら僕がリカバリーするし、同じ失敗を防ぐための仕組みも作っています。GSで僕がしてもらったことをそのまま実行していますよ。

庄司 私も、人を信じて任せるのは大切にしています。GSで先輩に信じて任せてもらったから私は成長できたので、起業した今も同じようにしています。

それから、事業には波がありますが、頑張らないといけないときに走り続けられるのは、部下よりも頑張るGSの上司たちの背中を見続けてきたから。

特に、リテールセールスで一緒に組んでいた先輩は本当に手を抜かない人で、やり始めたらどんなに忙しく大変な状況でも責任を持ってやり切る。言葉だけでなく、その姿を間近で見られたのは本当に良かったです。

──尊敬できる上司が揃っていた。

庄司 そうなんです。入社時に人事から、「会社を辞めたいと思ったとき、その理由が「人」にあるなら一度思いとどまってほしい。辞めるべきはあなたではない」と言われたのですが、本当に尊敬できる良い人しかいませんでした。

それに、ストイックに頑張る人ばかりで、ある先輩は「上司が自分以上のスキルを持っていなかったら、そのポジションは私が就くべき。私以上のことができる上司の下でしか働きたくない」と言っていたほど。

だから、上司はその座に甘んじないし、部下から認められるような仕事をする人ばかりだったのだと思います。

成長に必要なのは、新しいことへの挑戦

──どんなきっかけでGSを卒業し、起業したのでしょうか?

松田 GSでの日々に何一つ不満はなく、本当に社会人の基礎を学ばせていただきました。でも4年が過ぎた頃、入社1年目のように急成長していない自分に気づいたんですね。成長が鈍化しているな、と。

僕は、全ての物事は始めた瞬間が一番成長すると思っていて、急成長するには新しいことへの挑戦が必要だと思い、2020年に株式会社TSUIDEを設立しました。

──どんな事業をされているのでしょうか。

松田 提供しているのは、BtoB向けの総合営業支援サービスです。自分が得意とする営業の領域で事業を始めました。

特徴は2つあり、1つはメンバーの9割が副業で参画していること。お客様のお困りごとは、プロフェッショナルである副業人材が解決しています。もう一つは、営業に必要不可欠なDXツールの導入から社内運用、データ分析・活用まで一気通貫で支援していること。

DX化がバズワードとなり、とりあえずITツールを導入するフェーズはようやく落ち着いてきましたが、それらをきちんと使いこなすフェーズに行けない企業がとても多いので、データを集めて活用できるように支援したいと思っています。

自分の好きなことを仕事に

庄司 私は小さい頃から「自分の好きなことを仕事にしたい」と思っていて、最初は副業で自分の事業を始めたい気持ちが強くなったのがきっかけです。

ただ、GSで私のやりたい副業をするのは現実的ではなく、副業ができる会社への転職を考えるようになりました。でも、GSはみんな人が良いし、学ぶことがたくさんあったのでかなり悩みました。

それでも最終的には、バンガード・インベストメンツ・ジャパンに転職し、同時に副業で事業作りを始めました。約3年半が経った頃、バンガードが日本撤退を決定したので、そこからは自分の事業1本で勝負しています。

──どんな事業を展開しているのでしょうか?

庄司 「世界には、想像以上の旅がある」をコンセプトに、特別な旅やオリジナルツアーの企画を提供する株式会社Wanderismを立ち上げました。

ただ、コロナの影響で海外旅行に行けないですし、国内旅行もままなりません。

だから現在は、旅行と親和性の高い英語の事業をスタートさせ、書籍の執筆やSNSでの情報発信、英語のオンラインコーチングなどを展開しています。

1冊目の「読まずにわかる こあら式 英語のニュアンス図鑑」は10万部を突破し、2022年に出版した2冊目の「これを英語で言えるかな? こあら式 意外と知らない英単語図鑑」は発売翌日に重版が決定するなど、英語事業は着実に伸びています。

GSのOBOGがくれた体力で、事業が上向く

野口 僕は、外国籍人材と日本企業をマッチングさせるLaboro株式会社を立ち上げ、外国籍の人たちとビジネスを作っています。

起業のきかっけはGSの業務でした。日本のトレンドは外国籍人材の増加だったのに、ほとんどの人材会社はこの領域に興味を持っていません。マーケットが伸びているのに誰もやらないなら、自分でやろうと思ったのが直接的な理由です。

ただ、創業後すぐにコロナの影響で、人材業界は大きなダメージを受けました。

それでも、国籍に関係なく能力ある人が活躍できる場所を作ろうとする僕に対して、GSのOBOGは「野口をバックアップできる力はあるから、安心して事業をしなさい」と言ってくれて、本当に資金援助をしてくれたんです。

あのとき、GSの先輩たちの応援がなければ走り出せなかったと思います。

──心強いですね。

野口 そうなんです。2年前の資金調達では、GSの先輩だけで相当な金額が集まりました。しかも、当時の売上は月に数万円しかなかったのに、プレゼン資料を開く前に「資金を出すよ」と言ってくれて。いろんな先輩からの好意に勇気をもらいました。

庄司 頑張ろうとしている後輩を、全力でサポートしてくれるんですよね。GSのハードワークを乗り越えた人なら、きっとビジネスでもうまくいく、と。

野口 本当にありがたいですよね。

──最初は英語ができなかった野口さんが、今は外国人と日本企業を橋渡しする事業をされているのですね。

野口 面白いですよね。GSに入社後、世界中からGSの若手がニューヨークに集まって1ヶ月の研修を受けたのですが、英語ができなくても絆を深められたし、そのネットワークがあれば世界中どこでも仕事ができると思えたんです。

生まれた国が違うだけで、日本に来た外国人の所得が低いのはおかしいし、成果は平等に扱われるべき。だから、日本企業に外国籍人材の受け入れ体制を構築し、外国籍人材が日本で平等に仕事と生活ができる状態を作りたいと思っています。

GSでの経験を、社会に還元する

──これからやりたいことや、成し遂げたいことを教えてください。

庄司 日本人は、精神的に辛くても頑張りすぎる人が多いと思うんです。だから、人生を楽しく幸せに生きるための手助けをしたいと思って、私は事業を始めました。

今は旅行の事業はストップさせていますが、いずれ再開したときに、辛いときに心の拠り所となるような一生の思い出となるツアーを企画し、もっと自由に自分らしく生きる人を増やしていければと思っています。

松田 僕が実現したいのは、複雑な世の中をシンプルにすることです。たとえば、日本のGDPを上げたいなら、労働人口を増やす試みをするよりも、現役の優秀な人たちの空いている時間を活用した方が早く成果を出せますよね。それを証明するためにも、僕は副業人材を活用したビジネスを展開しています。

給与も年功序列ではなく、成果を出した人に報酬を払うのがシンプルだし、アスリートのセカンドキャリアも斡旋する会社を作るくらいなら自社で雇用したほうがいい。世の中の疑問や複雑なことは、どんどんシンプルにしたいと思っています。

野口 僕は、日本に来てくれている若い外国人が、良い職場環境を見つけて満足いく所得を得られ、日本の会社も戦力となる外国籍人材を確保して慢性的な人材不足を解消できる状態を作りたいと思っています。

加えて、そこに辿り着くまでの過程も楽しみたいので、実は営業活動も外国人メンバーに任せているんです。

営業は日本人じゃないとできないと思われがちですが、外国人メンバーの営業活動で業績が伸びてビジネスが成功すれば、世の中に認められるきっかけになると思っています。

──成功したら、外国人メンバーの中から自分でビジネスを作る人が生まれるかもしれないですね。

野口 そうなると面白いですよね。将来、上場したときに外国人メンバーが役員や社長になったら、それはすごく嬉しいこと。僕は退任しても構わないと思っています。

松田 それわかる。GSで欲しいものをたくさんもらったから、僕らは起業してお金持ちになりたいのではなくて、事業で社会に貢献したいんだよね。僕が無調達なのも上場を考えていないからだし。

野口 まさにその通りで、GSでは自分の力ではできないような経験をたくさんさせてもらいました。先輩たちからたくさん与えてもらったからこそ、これからの人生は周りの人たちにできるだけ還元したい。それが、GS卒業生にできることだと思っています。

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取材・執筆:田村朋美

撮影:小池大介

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