競争社会を生き抜いてきたUnipos斉藤知明が「ぬるさ」の先にみた称賛文化の可能性

共に働く仲間に感謝と称賛を送り組織を強くするサービス・ピアボーナス®「Unipos(ユニポス)」が急成長している。2021年8月には導入企業540社超え。その立役者が新卒2年目で事業責任者となったFringe81株式会社 執行役員CPO・ 斉藤知明氏だ。 今では「この世界に必要なサービス」だと語るが、斉藤氏自身も最初はUniposのサービスを「ぬるい」と感じたと言う。どのようにして競争社会を生き抜いてきた斉藤氏の人生と、感謝と称賛の文化はリンクしていったのか。 本記事では斉藤氏のキャリアを振り返りながら、それを形成するに至った「9」のファクターをビジネスモデルキャンバス、ならぬキャリアモデルキャンバスで解き明かす。

なぜFringe81斉藤氏はUniposを通じて「人の力を最大化させる」社会を目指すのか?

僕は、「すべての働く人にスポットライトを」というミッションを掲げて、Uniposというサービスの事業責任者をしています。

Uniposは、従業員の見えない貢献を可視化するサービス。ギフトや少額の金銭に交換できるポイントに感謝・称賛のメッセージを添えて投稿することで、働く原動力になる上に、結果的に組織のエンゲージメントが上がる。

これは、僕が今抱いている「誰もが自由に働き、自分の力を最大化させる社会にしたい」という想いにつながるサービスです。

斉藤 知明(さいとう・ともあき)/Fringe81株式会社 執行役員 CPO
東京大学機械情報工学専攻。学業の傍ら株式会社mikanにて、CTOとしてアプリ開発・組織運営に従事。Fringe81株式会社に入社、Unipos事業責任者を務める。2019年4月には、Fringe81株式会社の執行役員に就任。過去起業時のチームづくりの経験と、上場企業経営者の視点を合わせながら、多様な個性を持つ東京本社総勢150名以上のメンバーを率いる。組織づくりのモットーは「自律的な意思決定を促す権限委譲」

では、僕の人生がこれまで不自由だったかと問われれば、そうは思いません。比較的、順風満帆な人生だったと思います。

小学校4年生から中学校受験のために猛勉強して合格。中高生時代は、剣道部のキャプテンに抜擢されて戦略を立ててただ勝負に勝つことが楽しくて仕方がありませんでした。大学受験でも予備校の選抜クラスで50人中48位だったのを猛勉強して1位になり、志望校に合格。

当時の僕はとにかく目標を定めてそこで1位になること、ただ勝つことの面白さをモチベーションに動いていました。

大学在学中にmikanに参画、2週間で20万DL

東京大学のAI系の学科に入学した僕は、はじめて「勝てない」という感覚を知ります。1番人気だったその学科に集まったのは本当の天才ばかり。正直、ここでは1位になれないと思いました。

この頃から「面白い」と感じる対象が、「勝つ」ではなくなっていたのかもしれません。大学3年時の夏には何か面白いものはないかと、60日中58日はインターンをしていました。

そんなとき、同級生の宇佐美峻に「一緒にアプリを作らないか」と誘われます。彼がつくろうとしていたのは「mikan」という英単語学習アプリサービスでした。

振り返れば、僕が面白いと思えることはきっとどこまで行っても「人」なのだと思います。英語教育のあり方を変えて、「日本人の英語の壁」を壊す。「1億総バイリンガル」になれば、日本のビジネスはもっと世界に広がります。

当時は今のように言語化できていませんでしたが、僕がこのアプリを「面白そう」と思えたのは、きっと英語で「人の力を最大化させる」ことに貢献できるからだったのだと思います。

創設メンバーは3人。CTOになった僕の家に集まって、開発に明け暮れる日々をおくります。当時の僕たちは、「とにかくユーザーに支持されるアプリを作ろう」と何度もやり直しを重ね、その結果、mikanは2週間で20万ダウンロードを達成する人気アプリになりました。

最短ルートで理想の世界を実現するため、Fringe81へ入社

その後、僕は大学院へ進学しましたが、mikanの事業に集中しようと2週間で休学届を出しました。しかし、思わぬことが起きます。

mikanの中で、別事業へシフトしようという計画が持ち上がったのです。その時の僕は、チームのメンバーとなかなか目線を合わせることができませんでした。何度も話し合いを重ねた結果、僕はmikanから離れることを決意したのです。

そして、エンジニアとしての自分の力不足を感じていた僕は、第2新卒として「就職」することを選びます。面接を受けたのは、mikanのCTOとして知り合った2社とFringe81の3社。

余談ですが、Facebookで「優秀なエンジニアに聞く、たった1つの質問」という記事広告が流れてきたんです。なんだろう?と思うじゃないですか。記事を読むと「続きは面接で」と。「この野郎」と思いながらも見事に釣られて(笑)、面接に行きました。後から聞いたらその広告を見て面接に来たのは僕だけらしいです。

でも、何か面白そうと思ったし。Fringe81のエンジニアがみんな「どうやったらテクノロジーで世の中を変えられるか」という想いを熱く語っていたことに共感できたんですよね。

当時のFringe81は、ベンチャーとはいえ80人規模の企業。学生ベンチャーだったmikanの頃は自分たちの給料をギリギリまで切り詰め、何でも自分たちでやっていました。

人も、金も、技術も、場所も足りず、ビジネスをする環境を整えることにとてつもなく時間を割いていました。「資金調達しないと死ぬ!」と、ヒリヒリした状況を経験したことも一度や二度ではありません。

かたや、会社に入れば様々なリソースが揃っているっている状態で新規事業をスタートできます。

今でも「起業しないの?」と聞かれることがありますが、起業はあくまでも手段の1つ。「こういう世界を実現したい」に一番最短なルートを選択すれば良いというのが僕の考えです。

きっと、アントレプレナーをしてきたからこそ、イントレプレナーのメリットを感じたのでしょう。僕はFringe81へ入社を決めました。

挑戦し続けられる環境を築いてくれた上司の言葉

Fringe81に入社した当時の僕はかなり生意気だったと思います。与えられた仕事に「それは何のためにやるんですか?」と聞き返したり、言われた仕事ではないことを勝手にやったり。おそらく普通の上司ならば扱いにくさを感じていたでしょう。

ある時、「このアプリはこのままでは伸びません」と自分が分析したデータを見せて、プロダクトの方向性の転換を上司に直談判したことがありました。さらにいうと、「僕に決める権限をください」とまで言いました。

上司は色々思うところはあったでしょうに、そんな強気な僕にすべてを任せてくれました

しかし、僕の未熟さが災いし、結果は惨敗。「自分から仕事を取りにいっておきながら、この結果か……」と打ちひしがれ、上司から叱責されることも覚悟していました。しかし、僕を前にした上司は予想もしていなかった言葉をかけたのです。

「失敗はみんなの責任であり、任せた私の責任。結果は失敗だったけれど、あのタイミングで仕事を取りにきてくれたからこそチャンスが生まれたんだよ」と言い、最後には「あの行動は尊いものだよ」と伝えてくれました。この言葉があったからこそ、僕は挑戦を続けようと思えたんです。

Fringe81に入ってからの僕は、時に痛い目を見ながらも、このように周囲に支えられながら自分のしたいことをやらせてもらってきました。

そして、ほどなくして「新たな事業の責任者をやってみないか」と声をかけられます。それが、現在のUniposの事業でした。

事業の意義を問い続け、自身の人生とつなげていく

Uniposは、Fringe81に根付いていた「発見大賞」という制度がベースとなっています。「発見大賞」は、社内で発見した従業員の貢献について紙に書いてダンボール箱に投票する仕組み。

そこから、従業員同士がリアルタイムで称え合える仕組みを作れないかという発想でUniposが誕生したのです。

僕が責任者となり、2017年に法人化しサービスをリリースしました。しかし、最初の2年ほどは「本当にこれが自分のやりたいことなのか」という迷いもありました。

そもそも社長の発案ではじまった事業。しかも僕個人は競争社会の中で「勝つ」ことをベースにこれまで生きてきました。影で貢献している人に感謝しよう、評価しようという考えに対して「ぬるい」と思う部分もありましたし、営業先で実際に言われることもありました。

まだ僕自身、事業の価値を腹に落とすために悩んでいる時期だったのですが、ミッションを考えなければならないタイミングがあったんです。

当初は僕だけでつくろうとしていたのですが、「ミッションはみんなでつくらないと、みんなで追いかけられない」という意見があったので、深く考えずにメンバーを巻き込んでやってみたんですよね。そうしたら、本当に素晴らしい言葉がたくさん出てきました。たぶん自分一人でつくっていたら出てくることのなかった言葉なんです。

あとで「実は期待していなかった」とメンバーに伝えたら、「バカにしないでください」と言われちゃいました。

この経験は僕にとってすごく尊いものになりました。そこから生まれた「すべての働くひとにスポットライトを」も、Uniposの事業の価値も、すっと腹に落ちるようになったんです。

僕は「自分は競争に勝ち抜いてきた」と思い込んでいましたが、振り返ればmikanの時もFringe81に入ってからも、遡れば受験も剣道部も。僕はひとりで勝ってきたわけではありませんでした。実は周囲の人に支えてもらっていたり、挑戦できる環境があったからこそなんですよね。

応援してくれたり、共感してくれる声が、ずっと僕の背中を押してくれていたんです。そう思えてから「Uniposはこの世界に必要なサービスだ」と胸を張って言えるようになりました。

自分がこれまでしてもらってきたように、何かにチャレンジしようと思っている人が応援される世の中であって欲しい。自由に働けるようになって欲しい。

Uniposを前進させていくことが「人の力を最大化させる」社会へとつながるのだと信じています。

斉藤 知明のキャリアモデルキャンバス

大学在学中にmikanを起業し、Fringe81へ就職した斉藤氏。事業コンセプトと自分の原体験とのギャップに悩みながら、リンクする部分を見出していった。今だから言語化できる、斉藤氏のキャリアを形成する要素とは?

Value ─キャリアを通じて提供したい価値は?─
→誰もが自分のしたいことを全力でできるよう支援をする

「誰もが、自分の可能性を最大化させて、やりたいことを実現できる社会を作ること。その1つの方法がUniposを提供することだと思っています」

Customer Relationship ─周囲の人とどう接する?─
→『期待』をすること

「特に上司と部下の関係には『期待』と『規定』があると思っています。相手はこれぐらいのレベルだろうと考えるのが『規定』。『期待』しているからこそ、どうすれば良いと思う?と相談できるし、部下もそれに答えようとしてくれるのだと思います」

Channel  ─自らの考えをどう届けている?─
→人と会って話す

「僕は書くことがあまり得意ではないので、なるべく人に会ったり、取材いただいたときに背景からできるだけ丁寧に話すようにしています」

Customer Segment ─誰の役に立ちたい?─
→挑戦を阻害されている人

「チャレンジする行動を阻害される状況をなくしたいです。すべての人が報われて、次の行動につながるような社会にしたい。だからこそ、Uniposによって行動と感謝の循環が生まれることが重要なのだと思っています」

Key Activity ─キャリアを通じて行っている行動や活動は?─
→行動し続けること/最強のフォロワーになること/挑戦者であり続けること

「リーダーとして行動することも大事ですが、それと同時にひとりよがりにならないように最強のフォロワーであることも重要です。アクションを起こしている人に対しては、『いいじゃん!』とまず肯定したいですし、挑戦している人を全力で応援したいです」

Key Resource ─原動力となる能力やスキルは?─
→「まねぶ」です

「まねして学ぶのは大得意です。言い換えると再解釈の力だと思っています。例えば、1つのことを説明された時に、自分の言葉で『つまり、こういうことですよね』と言い換えられると信頼度が上がりますよね。コミュニケーションの助けにもなりますし、信頼し合える関係性を作る土台にもなる力だと考えています」

Key Partner ─自身のキャリアの重要な協力者は?─
→mikanファウンダー 宇佐美峻 / Fringe81 CEO 田中弦

「宇佐美は、いわゆる既定路線ではないところへ僕を引っ張ってくれた存在です。続いて、田中は弊社の代表です。厳しい人で、メンバーに『もっとできるんじゃないか』とよく言うんです。でも、厳しさは期待の表れでもあるんですよね。僕はその哲学に影響を受けています」

Cost ─キャリアのために投資していること、犠牲にしていることは?─
→人と会う時間への投資

「人と会う時間を大事にしています。誘っていただくと喜んで飛んでいきます。コミュニティを作ったりコミュニティに参加したりすることもあり、人との関係性にすごく投資をしています」

Reward ─あなたは働くことを通じてどんな報酬を得たい?─
→お客様の変容

「ユーザーストーリーなどを通じてお客様の変化を知るのですが、『Uniposでこんなに組織が変わりました』という言葉にはパワーをいただきます。これはmikanの時代も同じで、『mikanのおかげでTOEIC上がりました』など、お客様に価値提供できている実感を得られると肯定されている気持ちになり、前進する力を得ることができます」

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編集:野垣映二(ベリーマン)
執筆:佐藤智
撮影:湯浅亨

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