【近藤哲朗】チャーリーはなぜ「図解」と出会い、自分の居場所を見つけられたのか?

海外のスタートアップから大企業までビジネスモデルを図解した『ビジネスモデル2.0図鑑』が話題になったチャーリーこと近藤哲朗氏。図解で多くの人の「わかる」を生んでいく近藤氏は、どのようにキャリアの選択をしてきたのか。本記事では近藤氏のキャリアを振り返りながら、それを形成するに至った「9」のファクターをビジネスモデルキャンバス、ならぬキャリアモデルキャンバスで解き明かす。

近藤哲朗(チャーリー)
株式会社そろそろ代表取締役/ビジュアルシンクタンク「図解総研」代表理事
東京理科大学工学部建築学科卒。千葉大学大学院工学研究科建築・都市科学専攻修士課程修了。面白法人カヤックでディレクターを務め、Webサービスやアプリ開発の設計・構築に携わる。独立後、2014年に株式会社そろそろを創業。同時期にグロービス経営大学院大学経営研究科経営専攻(MBA)で学ぶ。著書『ビジネスモデル2.0図鑑』(KADOKAWA)が9万部のベストセラーとなる。

建築の構造化の視点が「ビジネスモデル図解」につながった

『ビジネスモデル2.0図鑑』がここまで多くの方に読んでもらえるとは予想もしませんでした。きっかけは、2017年にnoteで「2017年後半に感動したビジネスモデルまとめ10個」というタイトルで記事を公開したこと。これに想定外の反響をいただき、書籍化にもつながりました。

僕はビジネスモデルだけでなく、複雑でなかなか理解がしにくいとされるあらゆる仕組みや構造を図解しようとしています。

図に落とし込めることは、きちんと理解できている証拠。この図解化の根底には、大学と大学院で学んだ建築の視点があります。学んでいる当時は意識していませんでしたが、建築はさまざまな情報を集約して整理し、構造化していくもの。

この「構造化」思考が、図解につながり、その結果僕の人生を拓く土台にもなりました。

白いシャツを着た男の人

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「自分よりも秀でている人がいたらその人がやればいい」

「建築を学んでいたのに仕事にしなかったんですね?」

そんな質問をされることがあります。実は僕も、大学1・2年生までは建築家を目指していました。しかし、3年生頃になると設計課題の仕上がりなどから、周囲と比較した自分の実力がわかるようになっていきます。そのうちに、「もっと得意な人がいるならばその人がやればいいんじゃないかな」と思うようになりました。

僕はこれまでを振り返っても、「どうしてもこれをしたい」と信念を持って切り拓いてきたタイプではありません。おそらく僕にとって大事なことは、「自分にしかできないオリジナル」を見つけることだったのだと思います。

黒いシャツを着ている男性

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建築のど真ん中を歩む友人たちの横で、僕が選んだ卒業論文のテーマは「都市におけるストリートパフォーマンスについて」。ストリートパフォーマンスが行われやすいエリアとそうでないエリアを比較し、計画されすぎている都市ではパフォーマンスは行われない。つまり、余白があることが重要だということを明らかにしていきました。

これは、いわゆる建築家を目指すような学生にはあまり選ばれない研究です。その「誰もしないこと」に焦点を当てていくことが自分には合っていたんです。その後、僕は建築家の道ではなく、卒業論文のテーマを深める都市計画について学ぼうと大学院への進学を決めました。

ワイヤーフレーム作成に建築の構造化を生かす

「志望理由不要! 自己PR不要!」

大学院修士課程の2年生の時、そんな新卒募集を見て受けたのが、「変な会社だな」とかねてから思っていた面白法人カヤックでした。当時のカヤックは、卒業制作で入社できる採用キャンペーンをしていたんです。

大学院に通いながら、僕は建築系の事務所でアルバイトもしていました。ゆくゆくはその場所に就職するのかなとも思っていたんです。だから、こんなことを言うと当時の同僚に怒られそうですが、カヤックは興味半分で受けての入社。周囲も自分も予想外の進路選択となりました。

とはいえ、カヤックに入った時点でWebサイト制作の知識はほぼゼロ。ディレクター職で入社しましたが、「ちょっとワイヤーを描いてみて」と先輩に言われて、「え? ワイヤーって何ですか?」といった返しをするほどゼロから学びをスタートさせました。質問して調べてフィードバックをもらって……と一歩一歩現場で学ぶ日々を過ごしました。

仕組みがわかってくると、Webサイト制作の仕事に楽しさを感じるようになっていきました。それは建築との共通点に気づいたからかもしれません。建築家もシステム設計者のこともアーキテクトといいますし、階層を作ったり導線を考えたりといったWebサイト制作はある意味でバーチャルで建造物を作るようなもの。カヤックにいた2年9ヶ月、僕はWebサイトをじっくり構築するおもしろさを実感していました。

黒いシャツを着ている男性

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「あちら側」にいけない、中途半端な自分に揺れる

カヤックのブレスト会議は一言でいうとスゴイ。「どこからそんなアイディアを思いつくのだろう?」という発想がポンポンと飛び交い、さらにどんどん拡散していく。その凄まじい瞬発力を持った集団に僕は圧倒されていました。

どう考えても、僕は「あちら側」の人間にはなれない。そして、アイデアを出せる人はこれだけたくさんいるのだから、僕がそれを目指す必要はない。

そんな思いから、じっくり設計する、腰を据えてプランを立てるといった役割を担うようになりました。組織の中で僕のようなタイプは珍しかったので、逆に必要とされるプロジェクトもどんどん増えていきました。

ただ、どこかで「こんな中途半端な状態でいいのだろうか」とも思っていました。とことんおもしろさを追求し、発想をぶつけ合う仲間たち。それに対して、僕は僕にしかできないことをしているのだろうか。この揺らぎから、僕はカヤックを退職することに決めました。

退職届を出す時、次にやることは決めていませんでした。カヤックの中で引き継ぎきれなかった仕事を続けつつ、フリーランスとなり、これから先なにをしていきたいかを考える期間にしようと思っていたんです。

クリエイティブだけでは社会課題は解決できない

ところが、予想外のことが起きます。カヤック時代の仲間たち4人と、「そろそろ」という会社を立ち上げることとなったのです。

「そろそろ」は、カヤックの思想を受け継ぎつつ、社会課題にむきあうひとたちへのサポートに特化したいという思いから生まれました。カヤックのクリエイティブは、「どんなものでもおもしろくする」という発想。それに対して、「そろそろ」は社会課題領域でおもしろいクリエイティブを生み、解決の支援をしようと作った会社です。

社会課題はその深刻さから、とっつきにくい印象を持たれることが少なくありません。だからこそ、クリエイティブで「おもしろさ」を加え、関心を持ってもらう仕組みが必要ではないかと考えたのです。

ノートパソコンを使っている男性

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「そろそろ」では、福祉領域や地域振興などに携わる組織の支援をしてきました。しかし、いくら凝ったクリエイティブでも救うことができないと、無力感に苛まれることが続きました。「補助金に頼って事業をしているけれど、いつ打ち切られるかわからない」「寄付金頼りで3ヶ月後には資金ショートが見えている」……、クリエイティブどころか、日々の事業継続をしていくことが精一杯な組織が多く存在したのです。

「そもそものビジネスモデルを見直し、クリエイティブにお金が回るような仕組みを作らなければいけないのではないか」

グロービス経営大学院に通うこととしたのは、こうした苦い経験があったから。それまでの僕はビジネスに対して、苦手意識が強かったんです。お金を稼ぐことに興味があまりなかったんでしょう。しかし、大学院で学びはじめると、そのおもしろさに気づきます。よくできたビジネスの仕組みは美しく、その構造は端的に説明できるもの。これは僕にとって大きな発見でした。

屋内, 窓, テーブル, 部屋 が含まれている画像

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「共通言語」を作り、すべての人が「わかる」仕組みを

図解は、グロービス経営大学院での学びを自分で理解するために描き始めました。文章だけで理解しきれないことも、図解にすることで深くわかりました。逆にいうと、図解できないことは腑に落ちていないというバロメーターになりました。

「せっかくだから公表するか」と図解をnoteに投稿したのが2017年。予想以上の反響をいただき、本になってより多くの方にご覧いただくことができました。『ビジネスモデル2.0図鑑』は、50人ほどの有志のメンバーが集ったコミュニティで作成しました。今では、そのメンバーの何人かと、図解を使ってコミュニケーションを円滑にする「図解総研」を作っています。

振り返ると、僕が「図解」に没頭したのは、「これは自分にしかできないオリジナルだ」と感じることができたからだと思います。僕以上に得意な人がいたら、早々にやめていたかもしれません(笑)。

note「ビジネスモデル2.0図鑑 #全文公開チャレンジ」より

最初は自分のためにスタートした図解ですが、今では少し意味合いが変わっています。僕は図解を共通言語にして、複雑で難解なことを紐解き、情報理解の格差を是正したいと思っています。

とある編集者に聞いたのですが、難解な専門書を書いている著者の方に「もうすこし内容をやさしくした本を初学者向けにつくりませんか」と聞くと、「それはできない。私は難解にすることで仕事をもらっているんだから。簡単にはしません」というようなことを言われたそうなのです。

そこにどんな真意があったかわかりませんが、「複雑で専門家にしかわからなそうなことだから依頼される」という傾向はあります。

しかし、僕は自分だけで理解し他の人がわかっていない状況をつくることには抵抗感があります。なぜなら、すべての知識をオープンにして、みんなが知っている状態になる方が世の中はよりよくなるはずだと思うからです。

立場の異なる多くのひとが図解という共通言語で対話できるようになれば、その中からこの世界を変えるアイデアが出てくるかもしれません。大きなことをいうようですが、そうなれば情報理解の格差の是正につながり世界はもっとよくなると考えます。僕はそんな未来を見てみたいのです。

近藤哲朗のキャリアモデルキャンバス

建築学の構造化を土台とし、複雑な物事を図解して、誰もが理解しやすいフレームを作る近藤氏のキャリアはどのような考えに基づいて形成されたのか。

Value ─キャリアを通じて提供したい価値は?─
→「わかる」を増やし、コミュニケーションコストを減らす

「人がわからない状態からわかる状態を作る体験を大事にしていきたい。図解にすることで、わかる状態に辿り着くまでのステップを作っていきたいと考えています」

Customer Relationship ─周囲の人とどう接する?─
→フラットに上下関係なく接する

「心情的に年齢や役職や専門性などで上下を決めたくないんです。専門家の既得権益を助長せず、理解による上下を作りたくないという思いを図解にも込めています」

Channel  ─自らの考えをどう届けている?─
→Twitter→note→書籍化

「Twitterで日々の関心や発見を呟いて、それをnoteにまとめて、ある程度の分量がたまったら書籍化します。フロー型とストック型を使い分けています」

Customer Segment ─誰の役に立ちたい?─
→素人的な視点を持っている一般の人と専門家

「図解は、専門家から一般の人へ伝えてもなかなか理解されないことを翻訳する作業だと考えています。専門家も一般の人もどちらも伝わらないことへのもどかしさを感じている。僕の役割は両者の橋渡しをすることです」

Key Activity ─キャリアを通じて行っている行動や活動は?─
→すべて図で考える

「図か描けていないものは理解できていないことだと思います。人の話を聞いたり読書をしたりした後も図解して、自分の理解を図ります」

Key Resource ─原動力となる能力やスキルは?─
→抽象化思考

「図解する作業の間には、必ず情報を具体から抽象化する工程を挟みます。そのため、物事を抽象化する思考は僕にとって重要ですし、得意な領域でもあります」

Key Partner ─自身のキャリアの重要な協力者は?─
→株式会社そろそろ・図解総研のメンバー

「そろそろ・図解総研のメンバーは社会的な意識がすごく強い。彼らと話をしていく中で、自分がどう社会に影響を与えていくべきか考えるようになりました。」

Cost ─キャリアのために投資していること、犠牲にしていることは?─
→本の購入

「好奇心ドリブンで生きており、しかも少し調べるというのではなく深く知りたいタイプなので特定のテーマの本をたくさん読み漁ることも多いです」

Reward ─あなたは働くことを通じてどんな報酬を得たい?─
→公式を作る美しさを感じること

「ビジネスモデルや会計の本質的な仕組みは、数学の公式の美しさに通じるところがあると感じています。その本質を汲み取って構造的につくられた図解も、普遍的な共通言語となりうると考えています」

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編集:野垣映二(ベリーマン)
執筆:佐藤智
撮影:小池大介

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